宮古島の知られざる名所「パチャの石段」とは
宮古島本島から来間大橋を渡ってすぐの小さな島、来間島(くりまじま)。のどかな集落を抜けたその東端に、地元の人々に「パチャ(端)の石段」と呼ばれる、ある歴史的な遺構がひっそりと佇んでいます。断崖絶壁にほぼ一直線に伸びるこの石段は、宮古島市の有形民俗文化財にも指定されており、観光マップに載ることも少ないため、訪れる人はまだまだ少ない知る人ぞ知る穴場スポットです。しかし、その先に広がる景色と、石段に刻まれた島の歴史を知れば、きっとあなたもこの場所の虜になるはずです。
命をつないだ石段の歴史
今でこそ静かに時を刻むこの石段ですが、かつては来間島の人々の生活を支える大切な生命線でした。1970年頃まで、来間島には整備された港も車道もなく、外部から届く物資はすべて石段のすぐ近くにある「船着き浜」に小舟で運ばれていました。人々はその重い荷物を背負い、この急な石段を一段一段登って集落まで運んでいたのです。
さらに1975年に宮古本島から海底送水が開通するまで、島には水道が通っておらず、生活用水はすべて崖下にある島唯一の湧水「来間ガー(来間川)」から汲み上げる必要がありました。特に重労働を担ったのは女性や子どもたちで、毎日何度もこの急な石段を上り下りしながら水を運んでいたと言います。想像するだけでその苦労が伝わってくるようです。
興味深いのは、この過酷な労働が思わぬ副産物を生んだという逸話です。1980年頃まで、来間小・中学校の児童・生徒や地域の青年会は、この石段を陸上競技のトレーニングとして活用していました。日々の水汲みと合わせて鍛えられた足腰は、宮古全体の競技大会で「来間の選手はバネがあって非常に優秀」と評判になるほどだったそうです。厳しい環境が、島の人々の逞しさを育んでいたのですね。
その後、車社会への移行と水道の整備により、石段は生活路としての役目を終え、一時は荒れ果てた状態になっていました。しかし2016年、宮古島市の「neo歴史文化ロード事業」によって復元工事が行われ、崩れかけていた石段が修復。手すりも設置され、現在では観光客でも安心して見学できる状態に整備されています。
石段を下りた先に広がる、息をのむ宮古ブルー
パチャの石段最大の魅力は、なんといってもその絶景です。石段のスタート地点、崖の上には琉球松を模した屋根が特徴的な「松の木展望台」があり、まずはここでひと休みしながら景色を眺めるのもおすすめです。
そしていよいよ石段へ。最大傾斜約40度という急勾配の石段を一歩ずつ下りていくと、視界を遮るものが何もない、圧倒的なエメラルドブルーの海が目の前いっぱいに広がります。この瞬間の感動は、実際に足を運んだ人にしか味わえません。眼下には「来間漁港」や、猫の舌のようなユニークな形をした通称「猫の舌ビーチ(パチャビーチ)」が見え、右手には来間大橋とその先に広がる「与那覇前浜ビーチ」まで一望できます。宮古島随一と言われる美しい海の色を、独り占めできる特等席と言えるでしょう。
石段の周辺には、潮風と断崖という過酷な環境に適応した沖縄特有の海岸植物が自生しており、貴重な亜熱帯の植生をじっくり観察できるのも見どころのひとつです。
島の歴史を辿る「来間ガー」散策
体力と時間に余裕があれば、石段を下りきった先にある「来間ガー」まで足を延ばしてみましょう。緑に囲まれた小道を少し歩くと、かつて島民の命をつないだ湧水の跡や石碑が現れます。今は静かに佇むこの場所も、かつては女性や子どもたちが毎日水を求めて訪れた大切な場所でした。実際にその場に立つと、当時の暮らしの厳しさと、そこに宿る人々の逞しさをより深く感じることができるはずです。
アクセス方法と駐車場情報
パチャの石段は、宮古空港から車で約20〜25分ほどの距離にあります。宮古本島から無料の「来間大橋」を渡り、来間島に入ってすぐの坂道を上ります。集落に入ったら「農家れすとらん 楽園の果実」周辺を目印に、「松の木展望台」の案内板に従って進みましょう。バス便もありますが、1日2往復と非常に少なく実用的ではないため、レンタカーやレンタサイクルでのアクセスが断然おすすめです。
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注意したいのが駐車場です。パチャの石段や松の木展望台には専用駐車場がありません。周辺は道幅が狭い地元の生活道路で、近くには神聖な「御嶽(うたき)」もあるため、路上駐車は絶対に避けましょう。おすすめは、坂を下りた先にある「来間港(猫の舌ビーチ付近)」の無料駐車スペースに車を停め、そこから徒歩でアプローチする方法です。混雑もほとんどなく、静かなプライベート感を味わいながら見学できます。
訪問時に押さえておきたい注意点
石段は最大傾斜約40度と非常に急なため、必ずスニーカーなど滑りにくい靴で訪れてください。ビーチサンダルやヒールでの訪問は大変危険です。手すりは設置されていますが、雨上がりは特に滑りやすくなるので注意しましょう。
また、石段周辺や来間ガー付近は亜熱帯のうっそうとした草木に囲まれており、蚊やブヨなどの虫が多く発生します。長袖・長ズボンの着用と虫除けスプレーの持参をおすすめします。日中でも薄暗い場所があるため、必ず日の高い明るい時間帯に訪れ、夕方以降の見学は避けてください。
さらに、隣接する海沿いの遊歩道の一部は崩落等により立ち入り禁止となっています。案内表示に従い、危険な閉鎖エリアには絶対に立ち入らないようにしましょう。集落や御嶽の近くでもあるため、静かに、マナーを守って見学することも忘れずに。
宮古島滞在をもっと充実させるために
パチャの石段でゆったりと歴史と絶景を堪能した後は、シュノーケリングやSUPなど、宮古島ならではのマリンアクティビティに挑戦してみるのもおすすめです。透明度抜群の宮古ブルーを、海の中からも楽しんでみてください。
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宮古島の旅の拠点となる宿泊施設選びも、思い出深い旅にする大切なポイントです。来間島や宮古本島には、海を望むリゾートホテルから、地元の雰囲気を味わえる民宿まで、さまざまな宿泊施設が揃っています。ぜひ滞在スタイルに合った宿を見つけて、宮古島の夜もゆったりとお楽しみください。
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観光客で賑わうメジャースポットとはひと味違う、静かで奥深い歴史と絶景が味わえる「パチャの石段」。宮古島・来間島を訪れた際は、ぜひこの隠れた名所に足を運び、島の記憶に触れる特別なひとときを過ごしてみてください。


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